2019夏のドラマのあらすじまとめてます

『ノーサイドゲーム』小説(原作)あらすじネタバレ&感想 


大泉洋主演ノーサイドゲーム、原作あらすじ(ネタバレ)をまとめています。

原作:池井戸潤

以下ネタバレします

ファーストハーフ

プロローグ

トキワ自動車の経営戦略室次長を務める君島隼人は、経営戦略室の上司である脇坂とともに滝川桂一郎が推し進めるM&Aに水を差す「意見書」を提出した。買収企業はバンカーオイル(船舶燃料)などを取り扱う商社である。経営戦略室が出したこの会社に対する適正価格はせいぜい800億だったが、提示された金額は1000億だった。
自動車メーカーとしての事業と関連して大きく収益に寄与する相乗効果をもくろむ滝川に対し、経営戦略室は「高すぎる」とM&Aに慎重だった。

滝川と脇坂は同期入社の役員だ。滝川は、将来の社長候補と目されるほど切れ者。脇坂は、内務官僚と揶揄されるほどの理論派だった。脇坂は滝川をライバル視していた。

このM&Aでは滝川は「ふざけた意見書」を書き換えるよう脇坂に指示したが、正義感の強い君島は、反対意見のままその書類を提出しM&Aの売買話はなくなってしまった。
その三か月後、君島に左遷人事が発表された。

ゼネラルマネージャー

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君島は、22年ぶりに本社を出され、横浜工場総務部長を任された。着任当日、佐倉多英という二十代半ばの女性に案内され、工場長の新堂智也に会う。新堂は、君島がここへやってきた経緯を知っていた。軽く挨拶を交わすと、ノックとともに吉原という前任の総務部長が入ってきて、ラグビーは好きかと聞いた。

横浜工場総務部長は、「トキワ自動車アストロズ」のゼネラルマネージャーも兼務することになっていた。しかし、君島はラグビーに興味あるわけではなく、シロウト同然だったが、トキワ自動車の社長はラグビーへ熱い想いを持っており、左遷にもかかわらず君島を呼び出し激励するほどだった。

君島を歓迎するセレモニーでは、50名の屈強な選手たちが出迎えた。選手たちの間でも、君島が左遷されてきたこと、ラグビーシロウトであることは伝わっていた。

その夜、工場近くの多むらでアストロズのメンバーが集まった。浜畑譲は佐倉多英にシロウトジェネラルマネージャーについて聞いた。浜畑は大学のころから腕を鳴らしアストロズで一番の人気を誇る選手だ。キャプテンの岸和田哲は、多英と同じ総務部に在籍していた。
アストロズはまさに2軍に落ちそうなほどギリギリの成績だった。今回シロウトの君島が着任したことも、チーム弱体化を狙う戦略じゃないかなど選手たちも色々不安になっていた。さらに監督まで辞任というまさに窮地だった。

翌日、君島が出社すると、前任の吉原はすぐに着手すべきことを2点伝えた。1つ目は監督人事で、2つ目は予算案の作成だ。

成績低迷と監督の健康問題が原因で、監督の辞任が決まったばかりだった。吉原が候補に挙げた二人は、竹原正光と高本遥だった。前者はベテラン、後者は選手を一昨年前に引退し、海外でコーチングを学んできた若手だ。監督としては未知数だ。

経営資源は同じでも経営手腕が異なれば、会社の業績は異なるのと同じで監督次第でチームは大きく変わるという。

また、トキワ自動車アストロズは総勢80名の大所帯で16億円の支出をしていたが収入がなく大赤字だ。島本社長の肝いり案件のため、予算は最終的に通ってきたものの、滝川常務からはいつも反対を受けてきたという。

君島は予想を超える赤字を目の前に、本年度の予算案で特に変更すべき点はあるかを確認すると、新しい監督の契約金などを含んでおく必要があると伝えた。引継ぎが済んだ吉原は、すぐに出向先へと異動してしまった。

赤字予算への構造的疑問

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多英に手伝ってもらいながら予算を組む君島。総額16億の半分は人件費だった。ほかのプラチナリーグでもこのぐらいの予算がかかっているのか、と多英に聞く。公開されていないのでわからないものの、このくらいの経費は掛かっているはずだという。

君島は、チーム運営に費用が嵩むのはわかったが、収入がほぼないことに疑問を持った。チケットの収入はどこへ行った?と君島が問うと、日本蹴球協会に入ることになっていると答える多英。

日本蹴球協会には、毎年1500万の参加費を支払う。プラチナリーグは16のチームがあるので2億4500万が協会に入り、競技場の使用料、運営に必要なスタッフ、広告宣伝、チケットの販売管理、協業に必要なコストをすべて請け負い、チームの移動に必要な交通費や宿泊費を負担することになっている。チケット代金はいったん協会に入り、それを実績に応じてチームに分配するルールだ。

しかし、実際のところ、試合に出場する登録選手の数だけしか出ないため、移動ごとに100万は使うことや、チケット販売で利益が出ないため分配された実績もなかった。
1試合の平均3500人の集客で、平均のチケット代は2500円だとすると900万の売り上げになるはずだったが、還元されたことはなかった。
宣伝広告は協会側の責任事項だったが、3500人じゃペイできず、興行になっていないと君島は多英に話すが、多英もその通りだという。

そして、そのチケットも、かなりの数のチケットを会社で買い取っていて、ばらまいている事実もあるという。さらに、だれがその試合に来たかを把握したかも把握できていなかった。

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何とか変えていこうという人もいたが、日本蹴球協会が全く動かない。企業にこれだけの負担を強いて、何も還元しないことを当然だと思っているという。多英は説明を付け加えた。

アストロズの予算案

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滝川が「お前が経営戦略室だったら通すのか」と猛反発をしてきたが、君島は「もうけを追求する組織であればこんな予算案を提出しません」と冷静に答えた。社会的なチームであることなどを訴えるが、滝川は元アストロズの副部長をやっていたこともあり詳しかった。
痛烈な批判を受け、唇をかみしめる君島に「まあいいじゃないか」と社長が割り込んで、なんとか予算は通った。
しかし、島本が社長の座を降りた時、この予算が通過する可能性は限りなく低い、と君島は感じていた。アマチュアリズムを振りかざし、常に他人の金を当てにし反省しない日本ラグビーなんてつぶれてしまえと思わなくもないが、選手たちやそれを支えるスタッフはラグビーというスポーツを心から愛している。協会やプラチナリーグのやり方はそんな彼らの思いを踏みにじるものだった。

横浜工場に戻ると多英と岸和田にどうだったか尋ねる多英と岸和田。何とか予算は通ったという君島。しかし、教会やリーグが抱える矛盾やマーケティングのなさだ。さらに、2015年のワールドカップで南アフリカ相手に逆転勝利をおさめに本柱でラグビーブームが起きた直後にプラチナリーグが発足したにもかかわらず、運営はうまくいかなかった。
君島はこの大きな問題に、将来アストロズが強くなるには、子供たちに試合を見に来てほしいというと、「ジュニアチームはあるか」と尋ねた。
作ろうという話はあったが、実現できていなかった。できるか、と聞くと、選手は50人いるが全員が毎試合出るわけではないので、やりくりできる。多英はそう答えた。

すると岸和田も、以前から言われていた地域に密着したチーム作りも重要だという。どうすれば密着できるのかが問題だというと、君島は、ボランティアでも、ラグビー教室でも、地域の人たちとの接点を増やしてみようという。

果たしてそれがうまくいくかわからないが、やってみよう。そう話はまとまった。

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監督人事にかかる一考察

アストロズは、岸和田と多英が音頭を取り地域貢献について選手と話し合った。
・親子ラグビー
・ジュニアチーム創設
・ボランティア
等の案が出た。君島がざっと計算したところ、追加の予算は2千万近くだ。しかし、地域との交流はやがてアストロズに還元されてくるはずだ。その費用の捻出は取締役会でまた提案することになった。

そのあと君島は監督の竹原正光に会っていた。竹原にグランドを見せどう思うかというと、竹原は褒めた。またミツワ電器ファイターズにいたころとそん色ないといい、優勝が狙えるとも話した。しかし、本音なのか表情を見てもよくわからない。君島は本心が見えない男が嫌いだった。ただ、実績を見ても竹原の評価は安定している。ギャランティーの話まで及び、検討のうえで連絡すると伝えた。

そのあともう一人の候補である高本遥と会う。君島がシロウトだということから、いろいろ話しているがその内容がとてもくどかった。こいつはきっとバカなんだろうと話すうちに君島は思った。さらに高本が切り出したギャランティーが法外だった。これはだめだと思ったが、丁寧に検討の上連絡すると伝えた。

いい人材はどこの世界にもなかなかいないなぁと、君島はため息をついた。そもそも、いい監督ってどんな監督なんだと、その肝心なことが分かっていないことに君島は気が付いた。

過去のラグビーと社会人ラグビーのチームごとの成績と監督を調べたい。アナリストの多英にそういうと、多英はさっそく取り掛かった。

どんな監督が優れているのか、それが分かればオファーすべき相手も絞り込める。まず分かったことは監督が変わったとたん、チームがよみがえったり、低迷したりすることは頻繁に起きているという事だ。
新規事業に似ていると、君島が気づくのに時間はかからなかった。経営戦略室にいたころ、君島のところには新規事業の投資案件が持ち込まれていた。君島の評価軸は事業アイディアそのものではなく、経営者の優劣にあった。経営者には2種類に分けられる。成功する経営者と失敗する経営者だ。

成功に導く経営者は複数の事業を立ち上げ、どれも軌道に乗せ発展させるが、失敗する経営者は失敗を繰り返す。
チームを成功に導いた経験のある監督は次もまた成功する確率は高い。

退任記者会見で

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前監督は悔しさをにじませていた。新監督について今どういう状況ですか?とマスコミに問われ、監督候補の方と条件を詰めている状況ですと伝えた。

そのころ、城南大学ラグビー部OB会が開かれていた。野党第一党の蔵元の挨拶に始まり、柴門監督が「3連覇」を報告する。
しかし、指導者育成の観点からすると新監督を選出した方がいいと、蔵元が言い、大物OBの津田に意見を求めた。津田も賛成した。
柴門は、やらせてほしいという。「負けたのならわかりますが、3連覇を成し遂げたのに辞任せよとは納得がいきません。」そこまで言うと、津田から、「勝てばいいのではない、伝統を重んじて、和を尊び、OBのだれもが心から賞賛できる勝利こそ本当の勝利だ」といった。

柴門の改革が気に食わなかったのだ。現役の選手に口出しをして指導するのを柴門は断った。時代遅れの理論と方法で練習に効率が落ちるからだ。
OBが反発する理由はグラウンド外にもあった、劣悪な環境を刷新するためスポンサー企業を募って、ジャージやスパイクに企業ロゴが入ったのだ。伝統の破壊だと激怒するOBも多くいたが、柴門は耳を貸さなかった。
そして、橋本が新たな城南大学の新監督へ指名された。

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翌朝の新聞一面にラグビー部監督交代の見出しがあった。ただし、城南大学の話だった。柴門の名前を見つけると、君島が「あの柴門か」とつぶやいた。多英が、相当大胆に改革したからなぁと独り言をいうのに気づく。

低迷したチームを立て直して大学選手権三連覇の偉業を成し遂げた柴門に、伝統の破壊だと怒っていたのがOBで、更迭されたのが真相だと多英は君島に伝える。
君島は「これだ」と思いついた。

翌日、君島は岸和田を誘い出し、柴門監督について尋ねた。柴門監督が就任してから、城南大学は攻撃アイディアが豊富になっていながら、それが選手の間で理解され整理されているイメージだと岸和田は答えた。

チームの中には学生チームとプラチナリーグは違うという奴もいると思うが、柴門が監督になるなら大歓迎だという岸和田。

柴門に断られる可能性はあるが、当たって砕けてみよう、そう君島は心に決めた。

その翌日、城南大学にアプローチするも個人情報とのことで断られてしまう君島。前任者の吉原の名刺入れから、西川という男を見つけアプローチする。
折り返しの電話で、トキワ自動車ラグビー部ゼネラルマネージャーの君島と名乗り、柴門監督と連絡を取りたいのですが連絡先を教えてほしいと伝えると柴門個人のスマホの番号を教えてくれた。

柴門に電話をかける君島。アストロズの監督の話が出ると、柴門は「お断りします」と即断した。君島は「社会人チームには興味がないという事でしょうか」と聞くと、「興味はある」と答える柴門。どこかほかが決まったなどほかの事情があるのでしょうか、と腰を低くして尋ねる君島に「そんなのはありませんよ。私を断ったのはそっちじゃないkですか。それをいまさら何です」君島が戸惑っていると、柴門は失礼しますといって電話を切った。

前任の吉原に尋ねると、2年前の事件について話し始めた。
アストロズを率いていた外国人監督が去り、新たな監督を探していた。吉原は前田監督に打診していたが、滝川が柴門に打診したという。

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結果、滝川に謝罪してもらい、柴門を断ったというのだ。

君島は、柴門に直筆の手紙を書いた。無礼を詫び、アストロズに力を添えてほしいということ、またこちら連絡するという内容のものを、丁寧に誠実に思いが伝わるように書いた。
柴門はそれを読むと、同封されていた名刺が目に留まる「君島隼人…」柴門は押し黙り、しばし名刺を見つめたのであった。

柴門琢磨は君島と同じ大学の同期だった。君島のノートが巡り巡って、柴門がテスト勉強に使用することがあった。あまり言葉を交わしたことはなかったが卒業の二か月前、就職関係の書類を提出するために学校へ行ったとき柴門と言葉を交わした。

君島と多英が新横浜駅まで柴門を迎えに行った。改札を抜けてきた柴門に、「久しぶり、柴門」と右手を差し出すと、「こちらこそ君島」とその手を握り返してきた。

昼食を済ませると、アストロズのクラブハウス、練習グラウンドを案内すると柴門は、工場も見学させてくれという。会社の雰囲気を見たいのだ。「社内でラグビー部はどう見られている?」と質問も的確だ。

予算を通すのが一苦労。ひっ迫はしていないが、成績が低迷すれば廃部の可能性もあると君島は答えた。

柴門は契約の条件はと単刀直入に聞くと、プロ契約で頼みたいと答える君島。
何年契約にするかは相談させてくれと君島が言うと、どこまでのことを期待しているかによると柴門は答えた。

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優勝争いができるチームにして、そして、できれば優勝したいと君島が言うと、いつまでにと柴門が言う。

三年以内にと君島が言うと、「三年は長いから二年契約で。二年で優勝争いができるチームにする、優勝は約束できない。地域密着型のチーム運営をしたいという意思は尊重するが、練習方法に口出しは一切せず任せてほしい。もし、口出ししたらその時点で俺は降りる」柴門はそう答えた。

柴門は、まず俺がアクションを起こす、そのあとで選手たちの意見を聞いてほしい。やるかどうかはそれを見て決めたいといい、君島は了承した。

浜畑は歓送迎の中、いてもたってもいられなくなりカバンに入っていた封筒を取り出した。君島から手渡された封筒は、次期監督候補からの手紙だった。柴門琢磨と書いてある。
甲斐の途中から、チームメイトからメールが入り始めたのだ。5、6枚に及ぶ手紙の量にまず驚き、戦った内容そこで浜畑が判断した内容、こういう選択肢があったのではないかという分析、そして、チームの長所と弱点が網羅されていた。
浜畑が感じたのはかすかな恐怖だった。柴門がいうプレーができなかった理由はただ一つ、老いだ。「すべてお見通しってわけか」

君島もまた柴門から手紙を受け取っていた。
その手紙をアストロズのメンバーの前で読み上げた。そして、柴門からのメッセージをどう受け取った?と聞き、君島はメンバーに聞いていった。
みんなは感じたことを述べていった。浜本も自分の限界を指摘された気分になったといいつつ、それは正しいといい、選手としての限界と一人で戦っていた俺に寄りそってくれる人がもう一人いたといった。

すべては柴門を称賛する内容だった。皆が納得してくれるなら、柴門さんをアストロズに迎えるべく正式なオファーを出したい。賛成してくれるかと君島が問うと、岸和田が拍手をして立ち上がった。最後のいhトリガ立ち上がり拍手したとき、柴門が入ってきた。「優勝争いするぞ」という柴門に歓声が上がった。

新生アストロズ始動

記者会見が開かれたとき、150ものマスコミが押し寄せた。優勝争いできるチームにするという豊富で柴門は締めくくった。

マスコミからは、城南大学監督を辞任する際にもう決まっていたのか、更迭されたという事は本当かということに、柴門はマスコミの餌食とならないよう模範的な回答をしていった。目指すラグビーについて問われ、柴門は「私が目指すのは相手を徹底的に叩き潰す究極の攻撃ラグビーです。アストロズの選手たちと合流するのが楽しみです。」と答えた。

しかし、翌朝のスポーツ紙の見出しはこうだった。
・柴門監督、津田監督を叩きつぶす
・柴門、挑戦状。サイクロンズ潰す
・OB会の恨み、社会人で晴らす

なんでこうなるかな、という君島に柴門は楽しそうに読んでいた。「津田のやろう、叩きつぶしてやる」それは柴門の本音に違いなかった。

津田はその記事を見ながら、なぜ柴門がアストロズにと思っていた。三連覇でいい気になっている柴門に、更迭の鉄槌を下したのは津田だ。路頭に迷い、頃合いを見て救いの手を差し伸べてやれば自らの不明に気づくはずだと思っていたが、代わりの仕事をこんなに早く見つけることは計算外だった。
津田もまた、完膚なきまでに叩きつぶしてやると、新聞の柴門をにらみつけた。

君島の取締役会での追加予算について、さっそく滝川から突っ込みが入った。しかし、地域密着、ジュニアアストロズの企画に目を通すと「なんで、こういう企画が今頃出てくるんだ」と滝川は修正案に賛成した。島本は結構なアイディアだと称賛した。
猛反発を食らうと思っていた滝川の意外な賛成に「案外フェアだな」と思う君島。

羽衣部屋への入門

選手全員が回しをつけ、力士に突進し、土俵際まで押し込んでいく。動かない。身体能力の高い力士を前に、アストロズの巨体はいとも簡単に跳ね飛ばされ、転がされてしまう。メンバーの身体からは汗が噴出した。この練習が3日続き、最後の練習日に柴門が羽衣親方に深々と頭を下げた。「ありがとうございました。来週もまたおねがいします」この一言で全員がその場にひっくり返った。

ボランティア

小児病棟を見舞って元気づけたいという友部の提案に誰もが賛成を支、市内の病院に連絡したところ「ぜひいらしてください」とトントンと話が進んだ。
用意したボールは全部で300個。テレビ局も取材に来てくれた。そのニュースが流れると、うちにも来てほしいという電話もかかってくるようになった。
ガス抜きのBBQで
練習とボランティアに、疑問を呈す選手も出てきた。しかし、君島はすべてちゃんと意義を説明してこなかった自分が悪いといい、話し始めた。
空いたグランドでの試合、人気がなくなったら将来日本のラグビーは弱くなること、ラグビーが好きな子どもを増やすことで強化したい。ボランティアやイベントに駆り出しているのは、ラグビーを守るためだ。そのために向き合ってほしい。

数字を交えながら、説明する君島に友部が「ありがとうございます。できるだけたくさんの人に、ラグビー好きになってほしい」そういうとチームからも、それに賛成する声が埋まれた。

 

日本のラグビー界

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君島が理想とするアストロズの姿は、実はアストロズだけでは完結しない。プラチナリーグ全体、ひいてはそれを傘下に収める日本蹴球協会まで巻き込んだ改革が必要だからだ。
・地域密着型チームを定着させるために工夫
・チケット販売方法の見直し
・ジュニアチームの育成によるラグビー人口の裾野拡大
柴門に、お前が考えていることは大なり小なりみんなが考えていることだが日本蹴球協会が動かないといわれる君島。

今度プラチナリーグ連絡会議に提案書を持っていくつもりだという君島に、内容は悪くない。お前はしがらみがないからできる提案だという柴門。

プラチナリーグ連絡会

プラチナリーグ連絡会で、大会運営は昨年通りでという話となった。そこへ蹴球協会会長の富永が現れ挨拶をしていった。
そして、話が終わりそうだったところで、君島が「ちょっとよろしいですか」と挙手をした。自己紹介するとともに、改善点を指摘する君島。集客も昨年同様ですか?と聞く君島に、木戸はそのつもりだと答えた。正規にチケットを購入して入場した人の数を把握していたラ教えてほしいという君島に、必要ですか?と答える木戸。

昨シーズンと同じでは困るという君島は、提案書をまとめてきたので検討してほしいと、書類を全員に渡した。
興行の採算を改善してほしいという君島に、木戸は、アマチュアスポーツだといい、採算を最優先にして興行するのが正しいんでしょうかという。
アマチュアスポーツなら、アマチュアスポーツらしく金をかけず細々とやればいいという君島は、論を講じるものの、木戸は「ここは会社じゃない。ラグビーはもっと神聖なものだと私たちは考えている。金儲けがしたいのであればとっくにプロリーグにしている」と反論する。
ひとしきり議論し、木戸はうんざりしながら「本件は理事会にも意見を聞き検討します」と答えた。
その一か月後、君島が提案書について木戸に問い合わせたが「理事会で検討したが一義に及ばずということになった」と木戸は伝えた。ラグビーは金儲けではないということで一致しているという。さらに、行こうこのような提案は慎んでいただきたいと富永会長もおっしゃっていると伝え、一方的に電話を切った。

ファーストシーズン

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アストロズの攻撃はスムーズとは言いかねた。攻撃のバリエーションは増え、スキルの練習をこなしていたがうまくいかなかった。練習後、多むらに集まったメンツで話し合いが行われていた。やろうとしているラグビーレベルが高くてついていけないときがある、そう切り出したのは日本代表キャップの里村だ。
まあな、と浜畑もうなずく。
開幕してトキワスタジアムに客が来なかったら、という発言も飛び出したが、岸和田は「そんなことはないって」と前向きに言って聞かせた。
君島のプランは絵に描いた餅だという里村に、岸和田は疑っても仕方ないという。それでも疑うことをやめない里村に、「疑ってもいいが最後の10日間、言われたことはきちんとこなせるようにしよう」という岸和田。選手の心がばらばらになり始めていた。

8月の午後7時、開幕戦。昨シーズン7位のタイタンズは、アストロズから見れば格上の相手だった。
ウォーミングアップに集中していた選手が、スタンドに目を向け、動きを停めて立ちすくむ。どんどん観客が入ってきて、あっという間に半分近い席が埋まったのだ。「佐々コーチ」とジュニア・アストロズの指導に出向くことが多い佐々が子供たちから声をかけられる。

この日、トキワスタジアムで開催される試合のチケットは前売りで12000枚が売れていた。ボランティアやイベント、勧誘した選手たちの努力が実ったのだ。
選手たちの表情はまるで別人となり、「勝つぞ!」と選手たちの雄たけびがロッカールームに轟いた。アストロズは、この試合にももちろん勝った。

アストロズが快進撃を続けているのは津田の耳にも入った。競合ファイターズにも勝利し、続く5戦も無難に制したアストロズの注目は高まっていた。

次の試合はサイクロンズ戦だ。マスコミは、柴門と津田の確執の件も含めこの試合に注目していた。共同記者会見で、「サイクロンズ戦をどう戦いますか」と聞かれ柴門は「徹底的に叩き潰します。ラグビーの戦いはグラウンドでするものです。場外でこそこそするのはフェアじゃない。すべてはグラウンドで出す。」と答えた。

これは選手たちに向けたメッセージだと君島はわかっていた。柴門のコメントを知った選手は気持ちを一つに一気に燃え上がるだろう。これも柴門の戦略だった。

サイクロンズ戦

一進一退の攻防に、息苦しいほどの緊張感がラグビー場を支配し始めたが、7点を先取したのはサイクロンズだった。ハーフタイムを迎えるころには、7対21にまで点差が開いた。君島は心の中で「柴門何とかしてくれ」と叫んだ。

後半戦、柴門は大胆な選手交代をした。プロップのポジションに友部を入れ、日本代表の経験がある里村を下げ、新人の佐々を入れたのだ。
スター選手を下げ代わりに出たのは今年は言ったばかりの新人だ。アナリストの多英は「前半かなり走っている」ことを告げた。

相手の突進を早く摘み取り、反則を誘いペナルティゴールを一つ決め、10対21に。大胆な選手交代と作戦変更の効果はすぐに出た。
友部が見事なオフロードパス(タックルされながらのパス)を決めると、後方から走り込んだ選手にわたった。最初のトライが生まれ、17対21と4点差に迫った。

その後ペナルティーゴールを一つずつ決め後半35分を迎えていた。マイボールスクラム(相手陣内22メートルラインでのスクラム)が組まれようとしていた。コラプシング、サイクロンズ3番!レフリーのジャッジが聞こえた。ペナルティーゴールを狙える場所だが、3点では追いつけない。
岸和田の判断はラインアウトだった。試合終了の40分に分針が重なろうとしている。
「勝ってくれ」念じた君島に、トキワコールが聞こえてきた。
ラインアウトのボールが投げ入れられ、二人係でもち上げた選手が空中の高いところでキャッチし佐々にトスする。ボールをめぐるラック内の激しい攻防があり、再びアストロズの攻撃ラインが出来上がった。佐々から浜畑へ、そして、浜畑から三崎へのロングパス。タックルをされながら、三崎がゴールラインぎりぎりのところにグラウンディングしたが増えはならない。ビデオ判定の結果、ボールはほんのわずかゴールラインの手前にグラウンディングし、手元から離れ横にはねていった。フルタイムの笛が聞こえたのはその時だった。

エピローグ

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脇坂から君島に電話があった。時間を作って、脇坂に会いに行くと、脇坂は経営戦略室に戻ってこないかという。
滝川が買収しようとしたカザマ商事の案件が復活する。カザマ商事が800億の金額に値下げしてきたというのだ。買収後のオペレーションは営業部主導で進めろと言ってあるが、経営戦略室の力が落ちていて、後任の三笠も経理部へ戻りたいといっているのだ。
願ってもないチャンスだが、君島は横浜工場の仕事が片付いていないという君島は時間が欲しいといった。

横浜工場に戻ると、柴門が「トキワ自動車に入社させたい奴がいる」という。「選手としてか」と聞くと引退した男だという。2年前ニュージーランド遠征をした時に見つけて声をかけた。その後メールでやり取りしているという。
ポジションはスタンドオフで、浜畑の代わりだ。怪我したせいで、キャリアを棒に振ったが完治しているのだ。リスクの高いプロより、安定した人生設計を考えている。しかし、トキワ自動車に来れば社員選手として両立できる。
新卒の枠を一つ開けてもらってくれと、頭を下げる柴門に、人事部長に第二新卒や中途採用枠で何とかならないか聞くという君島。

脇坂に電話をして、誘いを断る君島に、次はないと思えという脇坂。

第二部ハーフタイム

新予算を携えて再び君島が取締役会に出た。そこで滝川に口撃を受ける。滝川は蹴球協会の在り方にも言及した。君島は、アストロズを代表し、どうにか予算案に理解いただけないかと頭を下げると、島本は「アストロズは進化している。今シーズンの活躍を見ないで、プラチナリーグを降りるつもりか。サイクロンズを撃破せよ。そして優勝だ」と一方的に話した。

横浜工場に帰って予算が通ったことを告げると、岸和田も多英も安堵した。ところで、カザマ商事の買収についてご存知ですか、と意外な発言が岸和田から飛び出した。
研究所にいる同期の星野があれはやめといたほうがいいといっていた、と告げる。君島は、やめておいた方がいい理由を聞くと、バンカーオイルだといった。

白水商船と契約してバンカーオイルを下ろしていたが、白水商船のエンジンに不具合が発生した。座礁の原因となったエンジントラブルについて横浜工科大学にバンカーオイルとの因果関係の調査を依頼してきた。分析には相当な時間と労力がかかるため、トキワ自動車の研究所に外注して、それを星野が手伝うことになった。
因果関係があったはずだと星野が言っていた。

君島はそれが事実だと、カザマ商事には巨額訴訟リスクが発生することになる。1年前にはそんな情報はなかった。君島は岸和田を連れて、星野に話を聞きに行った。星野は因果関係ありの結果を報告した。白水商船の調査依頼だったことは知らないことになっていたので聞くに、聞けないという。

君島は森下教授に「オイルの分析について相談に乗ってほしい」とでも伝え、話を通してほしいと星野に伝えた。

森下教授のもとへ向かった君島は、カザマ商事買収の新聞記事を見せながら「バンカーオイルの分析が白水商船の座礁事故がらみのものだったとある筋から耳に入りまして。それは事実でしょうか」と切り出すと、答えにくい質問ですね、という森下。
君下は、この買収を進めていいかどうかの判断をしたいだけだというと、他言無用でお願いしますと森下が言う。
「因果関係はありませんでした。カザマ商事のバンカーオイルはエンジントラブルの原因ではない」といい、買収は進めて問題ないという。うちに依頼された分析ではエンジントラブルとの因果関係があるという結論だったようですが、と君島が言うと、それは別のサンプルですと森下は答えた。

カザマ商事の社長風間有也と、滝川は酒を飲んでいた。デューデリジェンスに大きな問題もなかったことをカザマに伝える滝川。滝川と風間は大学時代の同級生だった。貧乏な学生だった滝川と違い、風間は裕福な家庭で育ち、エスカレーター式に明成学園を上がっていた。風間は大学時代、滝川を貧乏人とさげすんでいた。

風間の父は、専門商社の生き残りをかけアジアで廉価な燃料油を取り扱う専門商社としての立ち位置を確立したが、父は急逝し、風間有也が後を継ぐことになった。

滝川との話で、「ゴルフ場の存在に、島本が難色を示している」と伝える。さらに、ゴルフ場には反対運動もあるなと滝川が言うと、そんなことも調べているのかと驚く風間。

横浜工場にもその余波が来ていた。ゴルフ場反対者だ。君島が、危険なのでお引き取りくださいといい、名刺を差し出す。横浜マリンカントリーの環境破壊を訴える会の代表苗場
も名刺を差し出した。

契約がまだ成立していないことなど伝えると、苗場は鼻息を荒くした。君島は冷静に話し、筋が通るなら話は聞きますという。そのためには、どういう影響があるのか、理路整然と説明していただきたい」と君島が言うと、一通り腹立ちまぎれのやり取りが続いたが、一段はすごすごと引き上げていった。

佐々がやってきて、「横浜マリンカントリーから、カートのゴルゴを100台発注を受けるという話でまとまりかけている」と話を聞いた。
前までは横浜工科大の教授が反対の旗振りをしていたときき、その名前が森下だという。
佐々に、そのゴルフ場の責任者に詳しい話を聞けないかという君島。佐々はすぐにアポを取り、翌日面会にこぎつけた。

責任者は青野という男だった。話を聞くと昨年まで森下が反対運動をしていた。反対運動をやめた理由はわからないという。また、青野は、バンカーオイルの件で接点があったことを知っているかと聞いたら、いえ、と短く答えた。

その翌週、反対派代表の苗場が開発規模の縮小を求める提案書を携えやってきた。今後弊社がゴルフ場開発の当事者になった場合、要望は当該セクションに伝えると君島が言うと、いつもそうなんだという苗場。

トキワはゴルフ場を持っていないんだろという苗場に、社風に合わないのでと答える君島に、この前はうまくいきかけたのにという苗場。

カザマ商事の製品が白水商船の座礁の原因となればゴルフ場どころではなくなったはずだという苗場は、横浜工科大学の先生がその検証を担当していてこっそり教えてくれたという。その教授は森下だ。

その話を青野さんにしましたか?と君島が言うと苗場は焦らせようと思って話してしまったという。

翌日君島は青野に会って話をする。バンカーオイルの話を青野が知っていたことを指摘する。君島がカザマが隠ぺいしていることや多額のカネが動いていたことを指摘する。その秘密を守る立場にあるのはわかるが、君島は青野がやっていることは、不正であることを告げる。ラグビー選手だった青野に「ラグビーの精神はフェアなことでしょう」と追い打ちをかけると青野は申し訳ありませんでした。といった。

カザマ商事の買収について取締役で決議が行われていた。滝川アにとって、剛腕の評価を不動のものとし、社長に上り詰めるための道となるものだった。

脇坂は、営業部が行った企業精査ですが特に問題がないという事で間違いはないかと発言した。そして、2年前の白水商船の座礁事件がカザマ商事のバンカーオイルが原因で、それを隠ぺいするために、森下教授に3億支払った証拠を突きつけた。
青野の供述書も添付された。森下教授による3億円の受領書のコピーと、現金を引き出した風間氏の通帳のコピー。3つある口座からそれぞれ同日に1億ずつ引き出されていることを告げ、カザマ商事を買収することは巨額の訴訟リスクを負うことだと付け加えた。

島本は今回の買収を見送るとし、滝川の威信に深い傷をつけた。

君島は1週間以上前に渡したレポートを脇坂が滝川を蹴落とすための道具に使ったことを知る。滝川さんがいなくなったことで、廃部論者がいなくなったと安堵する多英に、滝川は論客だが、ラグビー部廃部ありきでの議論はしなかった。滝川は点滴ではあったが、点滴の存在がバランスを生むことであった。
滝川の不手際は痛恨には違いないが、それを社内政治に利用した脇坂の底意にこそ気味悪さがあったのだった。

第三部 セカンドハーフ

柴門が推す七尾圭太が第二新卒枠で、トキワ自動車に入ってきた。しかし、七尾はまだラグビー部へ入部するとは決まっていなかった。借り入部として七尾を預かることになった柴門。

滝川はラインから外され、子会社の社長になることになった。そんな話をしながら、今期のイベントやボランティアのリストを眺める柴門と君島。
アストロズだけではなく、ほかのチームや蹴球協会を巻き込まなければ変わらないのが事実だった。柴門は、「変わるさそのうち。そう信じてやるしかない」といい、新たなシーズンに備えた。

海外事業部に配属された七尾。そこの先輩である藤島レナはアストロズの大ファンだった。必須の入力項目のいくつかが空欄のままだったが、浜畑の名前を見て嬉々として横浜営業部に連絡をした。すると、不備の項目には朝、七尾にすべて連絡済みだという浜畑。
ランチから戻った七尾を見つけると、小言を言ったが、七尾がチェック中のものを勝手に処理しようとしたのは自分だとレナは気づく。しかし、のんびりした性格の七尾にレナは「私はもうちょっと優秀だったけどな」と思う。

その土曜日、アストロズの紅白戦を見に行くレナ。アストロズ好きの中本理彩を誘った。スタメンチームの紅組。控え組の白組。
そんな中さっそうと現れた白の10番は、七尾だった。レナは驚いた。2年目の佐々に、新人の七尾が活躍する。信じられないようなプレーの連続を見せつけた紅白戦になった。

楕円級をめぐる奇跡。

紅白戦が終わった後、多むらでは通夜のようにしんみりとした紅組がいた。50対0で勝つつもりだった。浜畑が監督はなぜスタメンチームと控え組に分けたのか、と問うと、友部が控えめに「釣り合うと思ってたとか」というと、ますます気持ちが沈んでいった。里村は、佐々と七尾の力をそこまで評価したという事かというと、友部は押し黙った。

里村は昨シーズン行われた日本代表のテストマッチでも、スタメン出場を果たしたスクラムハーフだ。
里村は、監督が代わって前任監督の主力選手を外して自分流をアピールするってことはよくあるというと、岸和田は柴門監督はもっとフェアだと反論した。
岸和田は里村の瞳の奥に、柴門への不信を見た気がした。

紅白戦にはサイクロンズの津田も見に来ていた。柴門に事前連絡を入れていた。そして、津田もまた白の10番に興味を持った。

そのあと、鍵原(サイクロンのジェネラルマネージャー)が里村に電話連絡をかけてきた。会って話したいという事だったが、内容は引き抜きについての話だと里村はぴんと来ていた。

レナは事業案件の書類を見ながら、七尾に抜けている個所を示していた。レナは七尾にラグビーのことを聞きたくてしょうがなかった。七尾は仮入部だと答えた。平日の練習は免除で、週末だけ横浜のグラウンドで一緒に練習することになっていると答える。小学生まではサッカーをやっていたが、小6に上がるころニュージーランドへやってきたことを話す。
近くに、サッカーチームがないこと、母親がサッカーとラグビーをそんなに差異がないと考えてラグビーを始めたこと。大学まではニュージーランドの代表も狙えると思っていたが、大学に入るとポジションの獲得はかつてないほど狭き門であった。そして、大学2年で怪我をしたことなどを話した。

柴門からは就職がうまくいかないときに声がかかり、正直うれしかったという。柴門監督は怪我する前のプレーをみてくれていた。またラグビーができる。

七尾のその言葉に、喜びが満ちていた。レナと話すうちに七尾は「一度でいいから満員のお客さんの前で決勝戦に出たい」という。レナは「だったらチャレンジしよう、逃げ回るよりぶつかっていった方がずっと簡単だよ。必要なのは勇気だけ」と話すと、七尾はハッとした。

七尾圭太がアストロズに入部を表明したのはそれから間もなくのことだった。

六月のリリースレター
脇坂は君島を本社に呼び、ラグビー部の展望を聞きたいといったのだ。アストロズ存続の意味があるのかと聞いてくる脇坂は、最終的に「今年は良いが、来年はないと思ってくれ」といった。滝川は廃部をちらつかせても、島本の一言で折れてきたのは、ラグビーへの理解の裏返しだったのではないか。だが脇坂は違う。この男はラグビーへの愛がなく、アストロズにとっての真の敵だった。

その後に開かれた取締役会で脇坂の発言があり、アストロズ強化費が今季限りかもしれないとうわさになった。

里村の裏切り

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うちの強化費が削られるって本当でしょうかと里村は君島に聞いた。その後、チームをやめたいと切り出した。日本モータースに行きたいという。

ラグビー選手として、よりよい環境を追い求めるのは当然。強化費が削られる、廃部寸前のラグビー部でプレーしたくないという里村。
脇坂さんが言ってるだけだと君島はいい、「一緒に優勝を目指そう」と説得するが、里村はゆがんだ笑いを浮かべながら優勝なんて無理だといった。

アストロズを見捨ててか、という君島に、里村はプラチナリーグ優勝ではなく、ヨーロッパのプロリーグで活躍したい。そういう事を君島さんも本音ではわかっているはずだという里村に、わからないと答える君島。

所詮は素人だと、君島を馬鹿にし、里村は、移籍させてもらいます。検討の余地はありません。と言い放った。

そしてリリースレターを発行するようにお願いしますと里村が言うと、ずいぶん虫のいい話だなという君島。
日本代表のテストマッチにも呼ばれる俺にリリースレターを出さないというのは日本ラグビーに対する挑戦ですよと、強気でいう里村。

君島は筋の通らない遺跡を認めるわけにはいかないという君島に、ため息を漏らす里村。そのうちわかりますよ。今月いっぱいでラグビー部も会社も辞めさせてもらいます。お世話になりました。

そう言って里村は出ていった。
里村の話はすぐにメンバーに伝わった。

君島は柴門に里村がやめることを伝えた。どこだ、と聞く柴門に「サイクロンズだ」と答える君島。柴門は直接話して意向を確かめたいという。

柴門が里村を呼び出した。来年強化費が削られるかもしれないという心配を話す里村に、「来年のことはわからないが、強化費が削られれば散り散りになる。俺もいない」そう柴門が言うと、「そうなってからの移籍か、そうなる前の移籍かということを考えた」と答える里村。

サイクロンズには返事をしたという里村に、移籍承諾書が出ない可能性について伝えたかと柴門が問う。津田はそうまでして里村が欲しいという事かと柴門が言うと、そうだと思いますと答える里村。
「リリースレターをだしていただけないという事でしょうか。」と柴門に聞く里村に「それを決めるのはフロントだ」と柴門は答えた。

今回の移籍はグラウンド外のオフサイドみたいなものだ。一年プレーできなくても、サイクロンズに行くという里村。
試合に出ていない選手を呼ぶほど日本代表は甘いか。俺なら呼ばないという柴門。

里村は移籍させてもらえませんかと頭を下げた。リリースレターが発行されないかもしれないという想定外のオプションを目の前に突き付けられて己の愚かさを知る里村。

君島からの話

選手に向けて、来期のアストロズの強化予算削減、廃部にまで言及した脇坂さんの話が出ていることを伝える。しかし、俺はあらゆる手を使って抵抗しアストロズを守るつもりだ。
どんな会社も業績悪化するとリストラが話題になる。トキワ自動車の場合そこまでの業績不振には見舞われていないが常にコストダウンの話は出る。企業が抱える様々な事情で、活動休止のリスクは必ず存在する。ラグビーだけをやっていればいい気楽な環境なんて世界中どこを探してもない。変化に対応し、逆境を乗り越える精神力が必要だ。

君島は全身全霊をこめて伝えた。

里村最期の日

里村が最後の練習を終えた。柴門が「知っての通り里村は今日でこのチームを去る」とさっぱりとした調子で言う。里村の離脱に誰も納得はしていないだろう。里村が最後に挨拶をするも、だれも拍手をすることはなかった。
「それじゃあ、テツ」といわれ岸和田が前に進み出た。「よくも俺らを袖にしてくれたな」という。アストロズはもっと強くなり、里村がいなくても優勝できるという。だが、だらしないプレーをしてアストロズの名を汚すことだけは許さない。最後に選別がある。決意表明でもあり、挑戦状でもある。君島さんお願いします。」

君島が渡したのはリリースレターだ。
君島はリリースレターを出さないつもりでいた。しかし、アストロズのメンバーが話し合って里村にリリースレターを出すことにしようと決め君島に頭を下げてきたのだ。

最期に岸和田は悔しさに顔をゆがめながら「サイクロンズでの検討を祈る」といい、里村は「みんなすまん」と深々と頭を下げた。

里村が移籍を希望した本当の理由は佐々にあった。自分が控えに回ることが分かっていたからだと、柴門が話した。佐々の実力は里村よりも上だ。日本代表に呼ばれるのも時間の問題だ。それは、七尾も友部も同じだと柴門は言った。
タレントは揃い、戦略もある。後は戦うだけだった。

セカンドシーズン開幕

一時間前の開場と同時に客席が埋まりはじめ、試合開始10分前には自由席も満席となった。しかも、平均単価は約2千円で、プラチナリーグのチケット平均価格千円の倍近い価格で販売しているのだ。

アストロズホームページからのチケット販売とファンクラブこの二つからの販売チャネルは君島が立ち上げた。
日本蹴球協会から安く仕入れたチケットを高く売ることで1試合あたり1000万のチケット収入を得た。ファン層が特定できたことでホームページ上の広告収入はチケット収入を上回るほどだ。

開幕戦に友部、七尾、佐々が登場するとアストロズファンも首を傾げた。しかし、対戦相手のインパルスから最初の先制トライを奪ったのは、開始わずか5分のことだった。佐々と七尾のコンビネーションだ。

ノーサイドの笛が鳴った。36対10の大差で勝利した。前半3つ後半2つのトライを奪い、強豪インパルスのトライを1つに抑え込んだ完勝だ。
七尾を中心とする華麗な攻撃の数々が披露された。里村や浜松に代わるスターが誕生した瞬間だった。拍手に包まれる柴門を見ながら、君島は思った。お前はグラウンドでの戦いに勝ち続けろ、俺は外での戦いに挑む。

君島君、振り返ると滝川が立っていた。こんなところでお会いできるとは思いませんでしたという君島に嫌味かという滝川。
ここまでよくやったという滝川は、君島に「さすがだ」といった。
「脇坂がつぶしにかかっていることは聞いたよ。新たな敵の出現というわけだ」と滝川が言うと、「正直滝川さんの方がましでした。ラグビーに愛情があるだけ」と君島は答える。滝川はラグビー部をつぶそうと思えば潰せた。「滝川さんが指摘したことはアストロズに限らず、日本ラグビー界が抱える課題ばかりです。真剣に考えていたからこそ、地元密着のチーム作りのための予算には反対しなかった」と君島は話した。

滝川の父はラグビーをやっていた。昔からラグビーの試合はよく見ていたという。しかし、高校の時は勉強で忙しく、大学は親の事業がよくなく生活費を稼ぐためのバイトに明け暮れたというのだ。風間がばかにしているのはわかっていた。とも言った。

「客観的に考えていたつもりだが、どこかカザマを見返してやろうという気道があったのかな」と滝川は悔しそうに言った。

君島はカザマの報告書の件で、「あの報告書は1週間前に脇坂さんにあげていた。」君島がそういうと、滝川は「だが脇坂はそれを、私を追い落とすために使った」と話した。君島は滝川を追い詰める意図はなかったそれを伝えておきたかった。
風間は今生き残ることに必死だ。自分の会社を買ってもらいたかったがとん挫した。代理人の東京キャピタルを通じて、この件を何とか伏せてくれ。白水商船には知らせないでくれ。そう滝川に伝えてきたという。

滝川は君島が調べ上げた事実に感服したという。「資金が引き出された銀行口座の明細まで調べ上げるとはね。」と滝川が言うと、「私の報告書にその項目はありませんでした。」と君島は答える。

二人の頭に疑問がわいた。

滝川は「君を横浜工場に飛ばしたのは私じゃないからな。わたしはそんなケチなことはしない」

月曜日の朝、君島は取締役会議事録を見ていた。疑問を脇坂に問い合わせると、脇坂は役員でもない君には関係がないという。

通帳コピーは風間社長本人と近いところに情報源がない限り、入手不可能だ。青野にまた問い合わせすると「カザマ商事が買収を持ち掛けた時、風間社長が脇坂に挨拶位したと思いますが、それ以上のことはわからない」と答えた。

中堅M&A専門業者である東京キャピタルに、問い合わせる君島は、東京キャピタルの社長の峰岸と会うことになった。
峰岸は、脇坂の学歴を知っているかと君島に聞いた。脇坂の高校は、明成で風間と同級生だったという。家業が傾いた脇坂は金のかからない国立大学への進学を決めたという。
高校時代の同窓会に参加した脇坂が、風間に滝川の情報を教えたのは脇坂だという。

最初から裏で脇坂が風間社長にアドバイスをしていたが、風間社長が欲張って、1千億提示したことが誤算だという。
風間社長によると森下教授の買収や、結局会社の売値をトキワ自動車の許容範囲まで下げたのも脇坂のアドバイスだった。でも、脇坂は風間社長を利用するのが目的だったんじゃないかと峰岸はいう。

滝川を陥れる罠で、最初から買収を成功させるつもりなんかなかった。ただ、そのためには買収に反対するだろうあなたがいては邪魔だった。だからあなたを横浜工場に飛ばした。しかし、今度は経営戦略室の力不足が気になり、戻ってこないかと声をかけたわけだ。
さらに、東京キャピタルはこの件を境にトキワ自動車を出禁になってしまったという。

君島は取引復活を見返りに、峰岸に証拠集めを依頼し、峰岸から証拠が届けられたのは翌翌週だった。

そんな中でも、アストロズのゼネラルマネージャーとして君島の本業は勝利に貢献することと、社会人ラグビーの在り方を変えていくことに他ならないと自負していた。
アストロズは、無傷の三連勝をあげていた。しかし君島は観客動員数の低減だった。

プラチナリーグ連絡会が開かれると、大会集客について、君島は理事を問い詰めた。しかし無反省な男どもに、何を言っても無駄だった。

快進撃を続けるアストロズだったが6戦目で、柴門は大きな戦術に打って出た。中心メンバーを外し、ベテラン勢を起用した。言葉通りこの試合は、苦戦した。サンダース相手に10対12で前半戦を終えたが、後半戦が始まると10対19にリードを広げられてしまう。しかし、柴門はサンダースの3番と11番が弱いとみたようだ。後半20分が過ぎたころ17対19と差を縮めた。アストロズは攻撃の突破口がどこかをつかみ、24対19と逆転し残りは徹底的に守備を固めた。
死闘にピリオドが打たれたのは、相手の販促だった。そこで連続攻撃は途絶え、フルタイムの笛がなった。
2週間後脇坂はラグビー部副部長の三原に、予算を半分に圧縮したいといい、そのたたき台をつくるように指示を出す。

この件が君島の耳に入ったのは、連絡会議の終了後だった。三原から脇坂を説得するべきだと連絡を受け、その直後脇坂へ面談のアポを取った。

脇坂に会うと、「次の取締役会でラグビー部の強化費削減を提案されると聞きました。それで、活動内容の説明に上がった」という君島。
説明が終わると、それで何か変わったのか、日本蹴球協会は重い腰を上げたのかと脇坂が問う。君島は「そこまで至っていないが、成功事例として認められつつある。社会人ラグビーの可能性を理解してほしい」と伝える。
脇坂と君島のやり取りは平行線をたどったが、「最終的にラグビー部は廃部だ」と脇坂は容赦なく告げ「私は気に入らないものはすべて切り捨ててきた。それが私のやり方だ。私は自分の流儀にこだわる」と付け加えた。
「考え直していただけませんか」と君島が言うと「断る」と脇坂は答えた。

それでは私も自分の流儀でやらせていただきます。そしてアストロズを必ず守ります、君島はそう伝えた。

ラストゲーム

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君島は取締役会に呼ばれて本社に向かった。取締役会で脇坂はラグビー部の強化費用削減を議論した。蹴球協会やプラチナリーグの在り方にこそ問題があり、リターンがないこと、金を払い続けてもその体制は変わらないということだ。その内容に、島本は腕を組み、沈思黙考した。
「社長、発言を許可願えますでしょうか」と君島が言った。

君島は、「アストロズ200を超えるボランティア・イベントを開催し、満員のファンをスタジアムに迎え来週には宿敵サイクロンズとの優勝決定戦に挑むところである。選手スタッフ一丸となって戦っている中、今回の議案の提出はアストロズにしてみれば死活問題で痛恨の極みだ」という。
「ジュニア・アストロズは150名の参加があり、ファンクラブは2.5万人、SNSは10万人フォロワーがいます。アストロズをコストという一面で切り取り協会の問題を指摘されればまさにその通りですが、アストロズは数字の集まりではなく、人の集まりです。」

君島が説明しているのは、アストロズの存在証明に他ならない。問われているのは、アストロズというより、トキワ自動車という組織の真価だ。
「日本蹴球協会とは激しくやり合い、戦いを挑み、プラチナリーグ改革を叫んでいくつもりですと伝えた。採算が取れるよう邁進していると事で、もう少し見守ってほしい。」

そこまで言うと島本が話し始めた。脇坂が言うこともわからなくはない。しかし、組織は帰られる。変えていくよう私もプラチナリーグに参加している経営者仲間とともに働きかけていくつもりだ。

脇坂は「おかしいですよ、こんなの。16億ですよ。それを稼ぐのがどれだけ大変か」というと、島本は@アストロズの維持費が高いのは誰もが承知している。だが、すくなくとも我々は間違った方向には進んでいない。社会的存在でもある。」

議論が一通り終わると、脇坂を支持する者はいなかった。
「君島君終わったよ。」不機嫌に脇坂が言い放った。「さっさと出てけ」

しかし、島本は「君島君にはまだここにいてもらう用事があるんだ」といい、君島が新たな資料を配った。

君島は「カザマ商事買収事案について、新たにコンプライアンス上の問題が起こった。東京キャピタルの峰岸社長からの情報提供で明らかになった事実です」という。

脇坂と風間商事の風間有也との関係、ブレーンとしてバンカーオイル品質の隠ぺい工作を教唆し、価格引き下げによる再売却を提案した経緯である。それらはすべて、風間本人からの書簡という形で配布した士書類に添付されている。

脇坂はこんな報告をする前になんで私に聞いて確かめないんだ。一方的すぎると憤慨したが、島本が「それを言える立場かね」と皮肉を込めて話した。
風間社長とこの後面談することになっている。君が答えなくても、風間社長がはなしてくれるだろう。そう島本が告げた。

プラチナリーグ改革案

そのころ、飯田橋でプラチナリーグ改革案と題された50ページを超える冊子を富永に出した。現状のプラチナリーグの運営に対して、参加チーム側から強い要望がありました。それをベースに改革案をまとめたものです。チーム数を減らしたうえで、ホームアンドアウェーのリーグ戦にすること、チケット販売の一元化によるマーティングの強化。あぶれた企業は降格だ。
これはラグビーの将来を守るためだといい、木戸は説明を進めた。観客動員数を増やす義務があるという事だ。アマチュアだからといって、客が来なくてもいいという理由にはならないはずだ。今の社会人ラグビーは企業業績に大きく依存し、それに左右されるものになっている。リーグの基盤をより強固に確立するためにも、この依存関係を徐々に修正し、自立させたい。

富永は不機嫌そうに聞いていたが、「だから大企業に参加を許してやってるんじゃないか」といった。「参加を許してやっているという発想はいかがなものか」木戸の一言に富永は色を成した。

「日本のラグビーが守ってきた歴史と伝統を理解したうえで、企業は我々のリーグに参加している。いやなら出ていけ」
「あなたが守りたいのは、ご自身の地位なんじゃないですか。富永会長」木戸は覚悟を背負っていった。
最終的に富永の解任を提案すると、賛成多数となった。

12月3週の土曜日、サイクロンズ対アストロズの試合に、サプライズが用意されていた。応援メッセージだった。選手全員が涙を流しそれを見ていた。
「頑張れみんな。応援に応えよう!勝つぞ」

試合開始の笛が鳴る。死闘を繰り広げるサイクロンズ対アストロズ。

運はサイクロンに味方したが、アストロンズは冷静そのものだった。チームの成長を感じる君島は、自分こそが浮足立っていることに気づいた。前半20分が過ぎたころ、7対7。拮抗した試合でのボール支配率は五分五分だった。

しかし、その後サイクロンズのスタイルがゲームを支配しはじめ、7対21と点差が開いた。その後アストロズの追加特典はペナルティーキックのみとなり、10対21で前半戦を終えた。

試合を見ていた藤島レナは、いつもとは違う戦い方に疑問を持っていた。しかし、「この展開がある程度柴門監督のゲームプランだとすると、サイクロンズの最初のトライがまぐれだとすると、14対10で4点差。風下で相手に押し込まれても、後半戦は風上に立って攻め込むことができる」というと、理彩もうなづいた。

後半戦、スタンドがわいた。選手交代で浜畑の名前がアナウンスされたからだ。しかし、浜畑は七尾と交代ではなく、12番との交代だった。レフリーの笛が空に響いた。

アストロズの反撃が始まり、浜畑の活躍でワントライが決まり、七尾のコンバージョンキックも決まり17対21に詰め寄った。サイクロンズはゲームをコントロールできない焦りからか、七尾へ危険なタックルが次々におこった。サイクロンズにイエローカードが出されるべきなのに、出なかった。

七尾は倒れ込んで動かない。ドクターがやってきて、脳震盪の検査をすることになった。七尾は他のメンバーと交代となった。しかし、アストロズは司令塔を欠き、攻守が一転した。

17対28

後半戦も30分を過ぎていた。歓声の中、七尾が帰ってきた。七尾が組み立てる攻撃が続き、コンバージョンキックが決まると24対28と4点差まで詰め寄った。後半戦は38分。

七尾はサイクロンズの裏を欠くロングパスを決め、ボールは岬にわたった。サイクロンズの選手が岬に突進し今にもタックルされそうなとき、岬のフォローに回ったのは七尾だった。ゴールライン直前、サイクロンズのフルバックが渾身のタックルを仕掛けてきたが、七尾は、ハンドオフで地面にたたきつけると、逆転のトライが決まった。

抱き合い、肩をたたき合い、換気の雄たけびを上げている勝者の背後に地面に崩れ落ち力尽きた敗者の姿がある…はずだったが、アストロン図の歓喜の瞬間が去ると、力尽き、グランドに膝をついたサイクロンズの選手たちの手を取って立ち上がらせ、握手した。

お互いの肩を叩いて言葉をかけあう。この光景に君嶋は「これがラグビーか」と思った。

 

君嶋の本社復帰

優勝して4か月が過ぎたころ、君島は本部の戦略室へ戻ることになった。それまでは横浜工場長がアストロズの部長職を兼務するのが慣例であったが、新堂工場長の退職とともに、君嶋が引き継ぐことととなった、

日本蹴球協会専務理事から「ぜひ経営のプロに入ってきてほしい」といわれ、君嶋は日本蹴球協会理事に就任した。

ゼネラルマネージャーは、引退した浜松が引き継ぐこととなり、多英は昇進した。

試合のグランドで、滝川が君島に声をかけた。

カザマ商事は法的整理に入ることとなった。白水商船の真実が知れた時、風間社長と森下教授は何らかの刑事罰を受けるだろう。一方脇坂もトキワ自動車の職を解かれ、特別背任で告訴すべきかと弁護士との調整に入っている。

「理不尽がまかり通る世界に、ラグビーというスポーツが必要だ。ノーサイドという精神は日本ラグビーのおとぎ話かもしれないが、今のこの世界にこそそれが必要だと思わないか。日本が強豪国になればその精神は背会に伝えられる。それこそが君に与えられた使命だ」

滝川がいう言葉に、君嶋は言葉を失った。その通りだと君島も思った。現状を打破し、日本のラグビーが本当に強くなるための仕組みを作ることだ。その第一歩は既に始まっていた。

 

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